言葉の選び方
アメリカで大学生活を送っていたとき
5人住まいのシェアハウスに暮らしていた。
そこには台湾人の同性愛者が1人いた。
年は私より2歳下だった。
彼女の恋の特徴は、いつも同性愛者ではない人を好きになることだった。
強くて凛として可憐な女性を好きになる。
学校の先生や、アンジェリーナ・ジョリーを理想の恋人だと言っていた。
ある日彼女は新しい恋をした。
同じ台湾からの留学生で、背が高く細身で黒髪の長い色白の女性。
年は彼女より5歳くらい上だった。
その人は頭が良くて、柔らかい女性というよりは、
少し冷たさを感じてしまうほどの美しさをもっていた。
その人の周りには、男女問わず常に誰かがいて、
その人を中心にいつの間にか台湾人留学生が
チャイナタウンにあるお店に集うようになった。
いつも1人でブラブラしていた彼女も、その人のいるチャイナタウンへ
通うようになった。
毎晩遅くにバスに乗って帰ってきては、毎晩遅くまで勉強している
私の部屋のドアをノックする。開けると黙って入ってきて、
その人がどんなに美しかったか、あぐらをかいて静かに話してくれた。
彼女がチャイナタウンへ行くときは、いつも片手に一輪の花を持っていた。
その人のイメージぴったりの花、カラーという花だった。
真っ直ぐで太い茎の先には可憐な白い花が力強く咲いていた。
チャイナタウンのお店でその人に会えないと、そのままカラーを持って帰り
キッチンの花瓶へ挿した。
翌日新しいカラーを買ってチャイナタウンへ出かけた。
その人に会えた日は、手ぶらで帰ってきた。
ある日、その人と何人かの台湾人留学生がシェアハウスへ遊びに来た。
その人は一輪のカラーを手にしていた。彼女はその人の斜め後ろから
顔を赤らめてキッチンへ入ってきた。私にその人を紹介してくれたのだ。
顔を赤らめる彼女に戸惑うその人は、キッチンにある花瓶に活けたカラーを見つけた。
既に花束になっていた。
その人が花瓶のカラーを見て何を感じたのかは聞いていない。
そしてその後何があったのかも聞いていない。
だけどある晩、彼女が遅いバスで帰り、玄関のドアをバタンと閉めて、
真っすぐ私の部屋に入ってきた日、一輪のカラーを手にした彼女は
あぐらをかいて座ってから赤い顔をして泣いていた。
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